江戸時代の父親の育児の姿を垣間見る遊び「こぞうねろ」
- 奥州わらべうた遊びの会
- 2024年2月10日
- 読了時間: 3分
更新日:2月23日
尾原昭夫氏著「日本のわらべうた 室内遊戯歌編」(文元社)に載っている「こぞうねろ」という遊び。
幕末から明治にかけての江戸(東京)で歌われていた「わらべうた」「わらべことば」の集録本、『あづま流行時代子供うた』(明治27年刊行 岡本昆石著)より掲載された遊びです。
メロディーがあったかもしませんが、楽譜は書かれていないので、唱えのわらべうたとして遊ぶことになります。
♪ こぞうねろ
おいしゃ ねろ
せいたか ねろ
おれも ねるから
われも ねろ ♪
小指から順に指を折っていく遊びです。
一番背丈が低い指は、「子ども(こぞう)」。
薬指は、お薬を使う「お医者さん」。
中指は、一番長い指なので、「背高」。
「おれ」は「わたし」、「われ」は「あなた」の意味です。
本では、手遊びとして紹介されていますが、その歌詞の内容から、子どもを寝かしつける時に、大人が、子どもの手を取り、遊んだものが、その子どもが大きくなり、自分の手でもこのように唱えながら遊ぶようになり、手遊びとして分類される遊びになったものもあると考えられます。
そのことについて、著者の尾原昭夫先生にご意見を伺いましたところ、そうであったっと考えらるととのお返事でした。
昔の人も、子どもを寝かしつける時に、こうして遊んであげていたと思うと、「昔も今も子育ては同じ」と感じられます。
また、自分のことを「おれ」と呼んでいることから、男性(父親や祖父など)が歌った歌なのではないか、ということについてもお尋ねしたところ、そのように考えられる、とのことでした。
(追記:女性も「おれ」と自分のことを呼んでいたと思われることを前提でのお伺いでしたので、男性に限るということではなく、男性も含んでいたと思われる、ということです。)
2010年に、NHK教育テレビで放送されていた知学遊学シリーズ番組「歴史は眠らない」。
11月は、精神科医の香山リカ氏のお話による「ニッポン 母の肖像」でした。
第1回は、「大江戸子育て事情」。
テキストの中には、天明4年に発行された「やしなひ草」(育ててくれた両親に対する報恩感謝の大切さを教える本)に描かれている、乳をふくませる母親の傍らで、子どもを寝かしつけ、大きい子どものそろばんの練習を見る父親の姿の絵が載っていました。
このような時に、「こぞう ねろ」は歌われたのかもしれません。
この遊びを、保育士さん向けのわらべうた講座で、紹介したとき、「こぞう」という言葉が、とても自分には受け入れられない。
「やい、こぞう!」の「こぞう」に感じてしまう、とお話された方がいらっしゃいました。
昔ではごく一般的な言葉でも、現在はあまりよくない言葉(差別用語ではなく)としてとらえられる、という歌の扱いは、とても難しいようにも思います。
私は、「今も昔も子育ての気持ちは同じ。繋がって子育ての苦労も乗り越えましょう」という気持ちで、この遊びを紹介しています。
どうしても、言葉にひっかかってしまう時には、自分に昇華されない歌ということですので、別な歌を選ぶようにすることがあってよいと思います。